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【医学部勉強シリーズ】薬理学の原理【薬理学:総論第1回】

みなさんこんにちは!今回は薬理学の原理についてまとめました。医学部の講義の雰囲気を感じていただければ幸いです!

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<目次>

生体利用率(bioavailability)

生体利用率Fは以下の式で表される。 F(%)={AUC(route)/AUC(iv)}×100 ただし

  • AUC(total area under plasma drug concentration-time curve):到達時間と血中濃度の関係の曲線の面積のことである。
  • route:薬の投与経路のことであり様々なパターンがある。
  • iv:静注、静脈注射のことである。

F≒投与した薬物の血中への移行量/全投与量、と考えられる。つまり生体利用率とは、静注時のAUCを100%とした時に、その他の経路で同じ量の薬を投与した際にAUCが何%になるかということである。Fが大きいほど吸収が良いと言える。

生体利用率(F)は肝臓での初回通過効果などの多くの因子の影響を受ける。初回通過効果(first pass effect)とは経口および経直腸の上部から吸収した薬物が肝臓を通過して代謝され体循環に入ることである。

投与経路

非経口投与には静注(iv)や筋注(im)などがある。非経口投与は全般的に効果発現が比較的早く、正確に投与量が決定でき、消化管をバイパスする。一方で毒性が強く出る可能性があり、無菌の薬剤が必要であり、コストがかさむことが多い。

経口投与は最も一般的な投与経路である。タンパク質は分解されてしまう。腸管と肝臓の代謝(初回通過効果:first pass effect)を受ける。肝臓での初回通過効果を最も受ける投与方法である。

舌下投与は上大静脈に入るため肝臓をバイパスする。直腸投与は下大静脈に入るため肝臓をバイパスする。特殊な投与経路である局所投与も肝臓をバイパスする。

薬の物理化学的性状:生体利用率との関係

薬の生体膜通過方法は以下である。

受動的透過:エネルギーは不要で能動勾配に従って透過する。

  • 濾過:糸球体濾過など、浸透圧勾配によって起こる。
  • 促進的拡散:膜内のタンパク質と結合するが、例は少ない。
  • 単純拡散(passive diffusion):脂溶性薬物の膜透過で重要である。

能動的輸送:薬の透過係数は薬の分子量と脂溶性に依存する。薬の大きさについては100〜1000程度の低分子である必要がある。大きいと膜や細胞間隙を通過できない。

水/油分配係数とは薬の相対的な脂溶性を表す指標である。

薬の荷電について整理する。生体膜は脂質二重層であり脂溶性のものほど透過しやすい。薬物の構造の中でイオン化している部分は非脂溶性で膜を透過しにくい。

弱酸や弱塩基の薬がpHによりどのように解離するか確認する。弱酸の薬ではHA(脂溶性状態の薬)⇄H++A-、という平衡になる。尿を塩基性にすることで、恒常性維持のためにH+産生方向に傾き、結果として薬を尿中に排泄することができる。弱塩基の薬ではBH+⇄B(脂溶性状態の薬)+H+、という平衡になる。尿を酸性にすることで、恒常性維持のためにH+消費方向に傾き、結果として薬を尿中に排泄することができる。酸性の薬の平衡の方がイメージしやすいため、塩基性は酸性の反応の逆と覚えておくと整理しやすい。また、弱塩基性の薬は尿環境を酸性にすると薬を排泄できるというように、薬と尿pHが中和の関係になった時に薬を尿中排泄できる。x

薬の溶解性について、剤形を工夫することによって酸性の薬剤でも、胃の酸性環境においてHAの形状を取りやすくして、脂溶性となり胃から吸収されやすくなる。

薬の化学的安定性について、胃酸存在下でも安定で胃酸から保護される必要がある。

剤形 Drug Formulation(薬剤学 Pharmaceutics):薬の吸収/生体利用率との関係

胃酸から薬を保護する方法の一つが腸溶コーティング(enteric coating)である。また、排泄速度が早い薬の頻回投与を回避する目的で放出制御剤(controlled release)が用いられている。

このように剤形が生体利用率に与える影響は重要であり、同一薬物を同一量含有し(薬剤学的同等性)、同一の効果・効能・用法・用量によって臨床で使用される医薬品どうしは生体内において臨床上の同等性(生物学的同等性)が保証されなければならない。つまり生体利用率や減少速度が一致しなければならない。

代謝が生体利用率に与える影響

代謝に関連する臓器としては肝臓(最も重要)、腸管粘膜、肺、腎臓がある。特に経口投与される薬は、薬効が現れる循環コンパートメントに入る前に“一部は粘膜局所で代謝されるものの、腸管粘膜から吸収され、門脈を経由し、大部分が肝臓で代謝される”という運命をたどる。これを初回通過効果(first pass effect)という。

ある種の薬は不活性な形で投与され、代謝されてはじめて活性型(bioactivation)される。このような薬をプロドラッグ(prodrug)という。

投与部位と作用部位

中枢神経は血液脳関門(blood brain barrier:BBB)を有するため特殊な標的組織(bio phase)である。

薬力学的パラメータ(pharmacodynamic parameters)

薬効の強い薬(potent)は低濃度でも効果を表す。効力の強い薬は溶液にしやすく投与しやすい。

患者側の因子

薬の代謝や排泄に関する個人差は重要である。

生体内変化と排泄(biotransformation, elimination and excretion)

薬の代謝(不活化)と排泄・除去に関連する概念を学ぶ。

薬物代謝

薬は肝臓や腸管で代謝されて普通は薬理活性が減少する。一方で代謝物が高い活性を示すことがある。この場合、代謝反応は代謝的活性化(metabolic activation)と呼ばれ、代謝物か活性代謝物(active metabolite)と呼ばれる。以下の2つのパターンで代謝物が高い活性を示す。prodrugの代謝物は活性代謝物になる。なお、第一相、第二相の代謝で必ずしも代謝的活性化が起こるとは限らない。

第一相(phaseⅠ):分解(degradative) 主に小胞体で行われる。酸化反応、還元反応、加水分解などがある。

第二相(phaseⅡ):合成/抱合(synthetic/conjugative) 主にサイトゾルで行われる。エネルギーが必要となる。グロクロン酸抱合、硫酸抱合、アセチル/メチル抱合、アミノ酸抱合(グルタチオン抱合・グリシン抱合)などがある。

P450酸化系酵素:チトクロームP450(cytochrome P450:CYP)は脂溶性薬物や異物のphaseⅠ代謝のうちの大部分の酸化的代謝を担う。

チトクロームP450に関する次の4つの事項は臨床的に重要である。

  • 誘導(induction):ある種の薬や異物はいくつかのCYPの合成を誘導する。つまり該当するCYPで代謝される薬の代謝が亢進する。
  • 活性阻害(inhibition):ある種の物質や薬でチトクロームP450によるphaseⅠ代謝が阻害されるため、代謝されるべき薬の代謝前化合物(親代謝物)の濃度が上昇する。
  • 遺伝的多型(genetic polymorphisms):薬の生体内変化の個人差の要因である。
  • 肝機能障害(liver dysfunction):肝機能障害によりチトクロームP450によるphaseⅠ代謝は減弱する。

なお誘導と活性阻害は薬物相互作用の原因となっている。薬物相互作用は臨床上重要である。

CYPを誘導する薬物と活性阻害する薬物が存在する。例えば抗てんかん薬であるフェニトイン(phenytoin)はCYPを誘導する薬物であり、併用薬物の血中濃度は低下する。

以下では代謝のうち臨床的に重要なグロクロン酸抱合とグルタチオン抱合について整理する。

  • グルクロン酸抱合:他のphaseⅡの代謝反応と同様に、極性の高い水溶性原子団をつけることにより尿もしくは胆汁中に薬物を排泄しやすくする。

  • グルタチオン抱合:グルタチオンのチオール基(SH)が正に帯電した求電子的な代謝中間物の解毒に関与する。

腸肝循環/肝排泄(Enterohepatic Circulation/Hepatic Excretion)

肝臓でグロクロン酸抱合体として胆汁中に排泄された薬は、大腸粘膜あるいは腸内細菌のβ-グルクロニダーゼによって加水分解されて再吸収された後に腸肝循環する。インドメタシンジギトキシンジゴキシンモルヒネなどがこの作用を受ける。これにより薬の作用が延長することがある。腸管循環は薬の作用時間を伸ばすというメリットだけではなく中毒を引き起こす要因にもなる。

腎排泄(Renal Excretion)

一部の薬は代謝されずにそのまま腎臓から排出されるが、ほとんどの薬は肝臓で水溶性代謝物になってから尿中に排泄される。

薬の尿中排泄には糸球体濾過、尿細管分泌、尿細管再吸収の3つによって決まる。

  • 糸球体濾過(glomerular filtration):糸球体での濾過は細孔を通過する限外濾過であり、濾過率は分子サイズと荷電状態に影響される。血漿タンパク質と結合した状態ではサイズが大きすぎるため濾過されない。

  • 尿細管分泌(Tubular secretion):血液中から尿細管上皮細胞内への取り込み(基底膜輸送)と、細胞内から尿細管腔への分泌(刷子縁膜輸送)という2段階の膜輸送によって制御されている。尿細管分泌は能動輸送でありタンパク質との結合に依存しない。

  • 尿細管再吸収(Tubular reabsorption):濃度勾配に従った受動拡散であり、脂溶性でないと再吸収が進まない。解離型、つまりイオン型のものは再吸収されにくいため薬の吸収と同じように薬のpKaと尿のpHによって解離度が変化し再吸収量が変化する。弱酸性の薬であれば、尿をアルカリ化することで薬の排泄が増加する。弱塩基性の薬であれば、尿を酸性化することで薬の排泄が増加する。

肺での代謝(Pulmonary Metabolism)

呼気に薬物を拡散する。ガス麻酔薬やアルコールなど揮発性で、かつ脂溶性がある薬物を拡散する。

胎盤移行(Placental Transfer)

母体血中の薬物は胎盤、すなわち絨毛膜を経て胎児に移行する。妊娠の進行と共に絨毛膜は薄くなり母体血中の薬物が胎児に移行しやすくなる。脂溶性の状態である薬物が移行するが、イオン化していても分子サイズが小さければ膜透過をする。

乳汁移行(Breast Milk)

脂溶性状態の薬物は乳汁中に移行する。母体血中のpHでイオン化しない薬物はイオン化薬物よりも容易に乳腺小胞細胞膜を通過する。乳汁は弱酸性であり、弱塩基性の薬物は平衡の移動、つまりBH+の状態に傾くことによりイオン化側に傾き乳汁中に留まることになる。

薬物の分布、分布容積、タンパク結合(Drug Distribution, Volume of Distribution and Protein Binding)

投与された薬は血中に入り、各組織に移行する。投与された薬が全て血中に分布したとすると、「初期濃度(C0)=投与量(Dose)/分布容積(Vd)」、の関係が成り立つ。分布容積(Volume)は、薬が全て血中に分布したと仮定した時の血漿体積のことである。

分布容積(Vd)は全体液量を超えることがある。例えば脂溶性の高い薬物は脂肪組織中に強く結合して蓄積して分布容積(つまり血漿中に薬が全て溶けたと仮定した場合の血漿体積)を増大させる。

薬物の血漿タンパク質との結合は薬の組織分布に重要である。薬が結合する血漿タンパクは主にアルブミンとα1酸性糖タンパク質である。アルブミンは全ての薬と結合するが、特に酸性薬物と良く結合する。α1酸性糖タンパク質は塩基性薬物と良く結合する。

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