【医学部勉強シリーズ】吸虫感染症【寄生虫学:各論第7回】
みなさんこんにちは!今回の記事も医学部での講義のまとめシリーズです。寄生虫学の中の吸虫について、各論的なトピックをまとめました!医学部での授業内容の雰囲気が伝われば幸いです!
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吸虫とは扁形動物門、吸虫綱に属する。葉状や舌状である。住血吸虫のみ細長い。口吸盤と腹吸盤が存在し、腸管は二分岐する。基本的に雌雄同体であるが、住血吸虫のみ雌雄異体である。
<目次>
1)日本住血吸虫症
病原体は日本住血吸虫(blood fluke)である。
歴史
広島県神辺町片山の付近で発見されたことから片山病と呼ばれている。
形態・生活史
セルカリアの経皮感染によって感染する。成虫は雌雄異体でペアになっており、門脈から腸管膜静脈に寄生し3〜6年生存する。中間宿主はミヤイリガイである。日本人の宮入氏が発見したことからミヤイリガイと命名されている。
症状
腸管膜静脈などの血管に虫卵が詰まってしまい、炎症を起こし組織が崩れる。また肝臓に虫卵がトラップされる。これらが原因で各症状が引き起こされる。
急性期では発熱、下痢、粘血便が生じる。また肝に虫卵結節が生じる。
慢性期では虫卵結節の線維化が起こり、肝硬変・門脈圧亢進、脾腫、腹水貯留が起きる。また虫卵が血流に乗って脳に到達し、脳症状である異所塞栓が起こる。
診断
検便や直腸生検によって虫卵検出を行う。感染している場合は抗体ができていることから免疫診断を行う。また肝エコーやCTを行う。白い亀甲状もしくは魚鱗状の線が肝臓のエコーもしくはCTに見えることが特徴である。血管に虫卵が詰まることによってこのような像が見える。
治療
プラジカンテルの経口投与を行う。プラジカンテルは細胞膜のCa透過性を上昇させ、寄生虫を麻痺させることで作用を発揮する。
2)マンソン住血吸虫症
中間宿主はヒラマキガイ科であり、貝という点で日本住血吸虫と似ている。成虫の寄生部位と症状は基本的には日本住血吸虫と類似だが、脳症状が少ないという点で相違がある。脳症状が少ない理由は、虫卵のサイズが大きく側方に大きな棘があることで虫卵が脳まで到達しないことである。
3)ビルハルツ住血吸虫症
成虫の寄生部位については、膀胱周囲静脈寄生であり日本住血吸虫やマンソン住血吸虫とは異なる。症状は血尿と排尿障害である。虫卵は一端に棘を持っており、虫卵の形状も日本住血吸虫やマンソン住血吸虫とは異なる。
4)セルカリア性皮膚炎
鳥類の住血吸虫のセルカリアによる皮膚炎である。痒みを伴う点状の丘疹が現れる。
5)ウェステルマン肺吸血症
病原体はウェステルマン肺吸虫(lung fluke)である。
生活史
メタセルカリアの経口摂取でヒトなどに感染する。小腸で脱嚢し、腸壁を貫通して、腹腔、胸腔を経て肺実質に到達する。成虫はコーヒー豆を2つ組み合わせたような形状である。雌雄同体であるが、2匹がペアで存在することが多い。第二中間宿主はモズクガニやサワガニである。虫卵について、フタの構造の反対側は殻が分厚くなっている。
病理・症状
咳やチョコレート色の血痰が現れる。
診断
喀痰(かくたん)※や便からの虫卵検出を行う。また問診によって生食歴を確認する。
※痰が出ること。
治療
プラジカンテルの経口投与を行う。
6)宮崎肺吸血症
ヒトは好適宿主ではなく、イタチやタヌキが主な終宿主である。胸腔内を移動し胸水貯留や気胸、好酸球増多を引き起こす。レントゲン写真からも胸水貯留を確認することができる。便に虫卵は存在せず、血清抗体の検出で診断を行う。
7)肝吸虫症
病原体は肝吸虫(liver fluke)である。
生活史
コイ、モヅコ、フナの生食によって感染する。メタセルカリアを摂取することで感染する。肝内胆管寄生をする。
病理・症状
少数寄生では軽傷であるが、多数寄生で肝腫大となる。画像から胆管が太くなっていることが確認できる。日本では患者は減少傾向で、韓国、中国でみられる。
診断
便や胆汁から虫卵検出を行う。虫卵はフタの構造の付近に2箇所の突起が見えることが特徴である。
治療
プラジカンテルの経口投与を行う。
8)横川吸虫症
病原体は横川吸虫である。横川吸虫の虫卵のサイズは平均的であるが、成虫のサイズは小さい。
形態・生活史
第二中間宿主はアユ、ウグイ、ヤマメ、シラウオであり、メタセルカリアを摂取することでヒトに感染する。成虫のサイズは小さく、小腸に寄生する。
症状
無症状である。
診断
検便で虫卵検出を行う。虫卵について、フタの構造の付近に突起物は無いことが特徴である。
治療
プラジカンテルの経口投与を行う。
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