医学部再受験・学士編入blog by シマ(東工大卒脱サラ医大生)

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医学部の地域枠離脱は合法?違法? 地域枠制度に関わる問題について

医学部の受験を考える際に地域枠のことが気になる方も多いのではないでしょうか。私自身、医学部学士編入を受ける際に地域枠で出願するか一般枠で出願するかの選択を迫られました。また一般入試を受けた際も同様に地域枠を検討しました。最終的には一般枠で合格しましたが、地域枠制度については受験の際に色々と調査をしましたので、その結果をまとめておきます。地域枠制度や、特に地域枠からの離脱について気になっている方の参考になれば幸いです。

そもそも医学部の地域枠とは何か?

まずは地域枠について簡単に説明します。地域枠とは卒業後に特定の地域や診療科で診療を行うことを条件とした選抜枠のことです。多くの場合は奨学金都道府県から貸与され、都道府県の指定する地域で一定期間働くことで奨学金の返済が免除される仕組みです。

地域枠には様々な種類がある

今の説明のように、奨学金の貸与を伴う制度が一般的ではありますが、実は地域枠には様々な種類が存在します。奨学金の貸与がある枠・ない枠、選抜が入学前に行われる枠・入学後に行われる枠、卒業後の勤務義務がある枠・ない枠、出願者の出身地の指定がある枠・ない枠など地域枠の種類は多岐に渡ります。勤務義務が発生する年数については7〜9年が一般的ですが、3年以下の枠、4〜6年の枠、10〜12年の枠も存在します。地域枠は一般入試だけではなく学士編入試験にも枠が設けられています。

地域枠からの離脱が問題視され、罰則が設けられた

地域枠の制度では約9年という長い期間、指定された地域で勤務をする義務が発生しますが、様々な都合により途中離脱をされる方がいます。2018年度には879名の地域枠の方が初期臨床研修を開始されましたが、そのうち9名が地域枠を離脱され、5名の方が都道府県や大学が離脱を認めていない状況で指定外の病院で研修を受けていたことが問題になりました。この事態へのペナルティーとして、地域枠離脱者を採用した病院への補助金の減額が実施されました。

地域枠の離脱は合法か?違法か?道義的責任とは?

確かに地域枠の制度は各都道府県の医師不足問題を解決する上で重要な制度です。地域枠の離脱者が増えれば制度が破綻してしまう恐れがあります。一方で地域枠を利用する学生の視点から見ると、約9年の義務年限は長期間であり、卒業後9年間のことを大学入学の時点で意思決定をする難しさがあります。また地域枠制度に関する説明が十分になされていないことがあり、地域枠のメリットのみが誇張され十分にデメリットを検討しないまま制度を利用してしまうといったケースもあります。制度設計者と制度利用者の双方にとって難しい状況となっているといえます。国や大学側は、地域枠制度を利用する学生には義務年限を守る道義的責任があるという見解を示しています。

では法律に照らし合わせて考えると地域枠の離脱は違法行為なのでしょうか。地域枠の奨学金貸与の契約は、民法に基づく金銭賃借契約であるため、約9年間の従事要件の前に奨学金を完済すれば地域枠の離脱は可能であると考えられます。つまりお金を返せば法律的には地域枠を離脱してよい仕組みになっています。また文部科学省は、大学側が就職先を指定することは職業選択の自由を制限することになるため不適当であるという見解を出しています。

終わりに

このように、地域枠制度の設計者は地域枠から離脱してほしくないと考えているが、法律に照らし合わせると奨学金を返済すれば離脱可能であるといういびつな構造になっています。学生の地域医療への責任感のみに任せるのではなく、法律面と地域枠制度のルールを統一してわかりやすいシステムを作ることができれば、制度設計者と医学生の双方にとって理解しやすい形になるのではないでしょうか。また学生の意見も取り入れながら、持続可能な新しい地域枠制度を検討していくことも重要であるはずです。

地域枠制度について関心のある方の参考になれば幸いです!